最近、注目度が急上昇している、あるライフスタイル。
それが『プア充』です。これは「プア(貧乏)でも充実している人」を指す造語です。
「貧乏」と「幸福」は、一見すると相性が悪く感じられます。
高収入であればあるほど幸福であり、低収入は不幸である。このような考え方は珍しくありません。ですが、収入が多くなかったとしても幸福に生きることはできるのです。
それどころか最近では、「高収入の人よりも、『プア充』のほうが幸せである」という考え方も浸透してきています。
この考え方は果たして、どのような意味を持つのでしょうか?
プア充のほうが幸せであると唱えられるようになったきっかけは、日本の税率引き上げにも起因するとされています。
政府は、2015年に所得税の最高税率の5%引き上げを予定しています。つまり、血を吐くような努力を重ねて高収入を得たとしても、最高税率は45%。なんと収入の半分近くを税金として納めなければいけないのです。さらに、所得が増えれば増えるほど、社会保険料の負担も膨れ上がります。
働けば働くほど、お金が稼げるという構図は、もはや成立しなくなってきているのです。
また、高収入の人はそれだけ消費欲が高く、支出も多いと言われています。得た収入を不動産や株の売買、投資などに投入する人も少なくありません。
そこからさらに収入を得られるのならばまだしも、浪費とストレスだけが残ったというケースも多々報告されています。
また、プア充のほうが幸せだとする論説のもう一つの理由が、日本社会の変容にあります。
今の日本は世界から見ても恵まれた環境とされています。経済成長期は高級品だったものも、今ではリーズナブルな値段で購入することができます。たとえば昔の日本においては、必要最低限の家電を購入するのにも大変なお金がかかりました。ですが、今ではそこまでの苦労をしなくとも真面目に働けばすぐに生活に必要なものは購入できます。
つまり、それほど多くの収入を得なくとも、生きていくことが可能になったのです。
シェアハウスに住んでいる人のなかにも、この「プア充」に当てはまる人は多いのではないでしょうか。そこそこに収入を得て、空いている時間を自分のために使う。
そうやってプア充ライフを満喫している人も多く存在します。
高収入を得るためには、多くのものを犠牲にしなければいけません。
長い労働時間やプレッシャーと闘いながら高い収入を稼ぎ出している人がほとんどです。
高収入を得たとしても、それを使う時間がないという人も存在します。
企業の利益のために自らの健康や私生活を犠牲とすることは、明らかに幸福を遠のける行為です。
もちろん、プア充という生き方に不安や危機感を覚える方もいます。結婚・出産費用を想定しないのはどうなのだろうか、老後の心配がある…そう考えるのは当然です。
しかしながら、今の日本人のワークスタイルはより多種多様なものとなっており、一つの型に当てはめることはできません。大手企業に勤めていれば一生安泰と言える時代が終わったように、高収入を得る仕事をしていたら幸福だと言える時代は終わったと言えるのです。
自分が生きていくために必要なものだけを持ち、必要最低限の仕事をすることこそ、現代日本を賢く幸せに生きていく手段なのかもしれません。命を縮めるような苦労をしながら高級タワーマンションに住むよりも、自分のやりたい仕事をほどほどにやりつつ、シェアハウスで気ままに自分らしく暮らす。
そのような生き方のほうが、幸福だと感じる若者が増えているのでしょう。
人の幸福は収入では決まらない。「プア充」という生き方は、それを社会に提示しているとも言えるでしょう。
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