対面が減る時代、東京の20〜30代はどう“つながる”?──シェアハウスという「カジュアルコミュニティ」のある暮らし




要点サマリー

  • 都市部の若年層を中心に、直接会って会話する機会が減っています。実際、この30年で1日あたりの対面交流時間は40%以上も減少しました。
  • 孤独感を抱える人は約4割にのぼり、とりわけ20~30代の若者でその傾向が強く見られます。東京都心で一人暮らしをする20~30代の4割以上が現在の生活で孤独や寂しさを感じているという調査結果もあります。
  • 対面での交流頻度が少ないほど孤独感が高まりやすく、精神的な負担も増大します。実際、孤独を感じる若者の45%はプライベートで人と会う機会が週1回未満しかありません。友人との交流頻度が高い人ほど生活満足度が高い傾向もデータで示されています。
  • こうした背景から、新たな暮らし方としてシェアハウスコリビング(共住型住居)が注目されています。他人と日常生活を共有することで、「ただいま」「おかえり」がある温かみのある暮らしや、困ったときに助け合える安心感が得られます。対面の価値があがることが予想されます。
  • シェアハウスは家賃負担の軽減だけでなく、人とのつながりによる心の安定という大きなメリットがあります。共同生活を通じて生まれるコミュニティは、孤独感の軽減や自己成長、キャリアにもプラスに働くとの声もあり、都市部での孤独対策として有効な選択肢となっています。コミュニティの価値があがることが予想されます。


現代の若者に減る「顔を合わせる時間」

スマートフォンやSNSの普及した現代、友人や知人とはオンラインで繋がっているのに、実際に顔を合わせて話す時間は減ってきていないでしょうか。インターネット経由で用事が済んでしまい、わざわざ対面でコミュニケーションしなくても生活できるようになったことが大きな理由です。さらに近年ではコロナ禍によりリモートワークやオンライン授業が一般化し、人と直接会う機会は一層減少しました。

こうした変化を反映して、人々が1日に対面で交流する時間は大きく減少しています。総務省「社会生活基本調査」によれば、1991年には1日あたり平均29分あった「交際・付き合い」に費やす時間が、2016年には17分まで短縮しました。これはこの25年で対面コミュニケーションの時間が4割以上も減ったことを意味します。下のグラフは1991年から2016年までの対面交流時間の推移を示したものです。


図1:1991年から2016年にかけて、日本人の1日あたりの「交際・付き合い」時間が29分から17分へと大幅減少した。インターネット・携帯電話・スマートフォンの普及に伴い、人々のコミュニケーション手段がデジタルに移行し、それに比例してリアルで会う時間が減っていったと考えられます。


特に2000年代以降は携帯電話やスマホでいつでもメッセージのやり取りができ、SNSで常時繋がっていられる便利さと引き換えに、直接会って話す機会が減る傾向が強まりました。コロナ禍を契機にテレワークが定着したことで「職場や学校で毎日誰かと顔を合わせる」機会すら減り、飲み会や休日の外出も控えられたため、人との交流はさらにオンライン偏重になりました。その結果、「誰とも会わず一日が終わる」日も珍しくなくなりつつあります。


孤独感の広がりと若年層への影響

人と直接会う時間が減る中で、「孤独を感じる」人は増えているようです。実際、政府の全国調査では約4割の人が何らかの形で孤独感があると回答しています。特に20代~30代の若年層でその傾向が顕著で、他の年代に比べ「しばしば孤独を感じる・常に感じる」人の割合が高くなっています。デジタルネイティブ世代である若者ほど、皮肉にも孤独を感じやすい現状が浮き彫りになっています。

東京圏に目を向けても、事情は同様です。東京都やその周辺で一人暮らしをする20~30代男女を対象に行われた調査では、「現在の一人暮らしで孤独感や寂しさを感じることがある」人が43.9%にのぼりました。約半数近くの若者が日常的に孤独を感じている計算です。この背景には、プライベートな時間に人と会う機会の少なさが関係しています。同調査によれば、孤独を感じると答えた人のうち45.1%は、仕事以外のプライベートで対面交流する頻度が「週1回未満」しかないといいます。


図2:首都圏で一人暮らしをする20~30代のうち、孤独感や寂しさを感じる人に「プライベートで人と対面交流する頻度」を聞いた結果。「月に1~3回程度以下」(グラフ橙色部分)の回答を合計すると45.1%となり、孤独を感じる若者の約半数は週に1度も誰かと会わない生活を送っている。


このように、人と会う頻度が極端に少ないことが孤独感に直結している様子がデータから伺えます。実際、内閣府の分析でも「友人との交流頻度が高い人ほど、主観的な生活満足度が高い」という傾向が明らかにされています。たとえば「週に3~4回」友人と会う人は、「全くそういう相手がいない」人に比べて生活満足度が2ポイント以上高いという結果が報告されています。逆に言えば、誰とも会わない状況が続くと、生活への充実感やメンタルヘルスにマイナスの影響が及びやすいのです。

孤独を感じた若者たちは、その寂しさを埋めるために様々な対処を試みています。動画配信サービスで映画やドラマを観たり、趣味に没頭したり、SNSを眺めたりといった方法が挙げられます。ところが、そうした「埋め合わせ行動」では根本的な解決にならないと感じている人が大半です。先の首都圏調査でも85%以上が「気を紛らわせても孤独感の根本解消には至っていない」と回答し、65%以上が「本音では人との交流をもっと増やしたい」と考えていることが分かりました。結局、人恋しさはデジタル娯楽では埋めきれず、「誰かと直接会って話したい」「繋がりが欲しい」というのが多くの若者の本音だと言えるでしょう。


シェアハウス・コリビングという新しい暮らし方


共同生活がもたらす安心感とコミュニティ

そこで注目されているのが、シェアハウスコリビングといった複数人で暮らす住まい方です。シェアハウスとは、一つの住宅に個別のプライベートルームとキッチン・リビングなどの共用スペースを備え、見ず知らずの他人同士が一緒に暮らすスタイルの住居です。「ただ家賃を節約する場所」ではなく、「孤独感をゼロにし、安心感と刺激的な出会いを提供する場所」とも言われます。文字通り生活をシェアすることで、一人暮らしでは得られない人との触れ合いや助け合いが日常の中に生まれます。

コリビング(Co-Living)は、シェアハウスに「ワーキングスペース(仕事場)の共有」機能が加わった新しい形態です。住まいと職場が一体となった共同生活空間で、リモートワークが普及した現代のニーズにマッチしています。単なる同居だけでなく、居住者同士で仕事やプロジェクトに取り組んだり、定期的にワークショップやイベントが開催されたりと、より密なコミュニティ形成が特徴です。コロナ以降、人との関係が疎遠になりがちな中で、同じ目的意識を持つ仲間と「住みながら働ける」コリビングは注目を集めており、フリーランスやリモートワーカーの若者を中心に国内でも施設が増え始めています。

シェアハウスやコリビングでの暮らしには、何より「常に誰かの気配がある安心感」があります。夜遅く帰宅しても真っ暗な部屋で一人きりではなく、「おかえり」と声をかけてくれる同居人がいるかもしれません。急に体調を崩したときも周りに誰かがいれば発見や手助けをしてもらえるでしょう。こうした日常の何気ないやり取りや支え合いが、一人暮らしでは得られない心の安定感をもたらすのです。実際に「シェアハウス最大のメリットは人の気配とつながりがあることで、金銭的メリット以上に心の安定に大きく貢献する」という指摘もあります。

共同生活ではリビングやキッチンといった共用空間で自然と会話が生まれます。朝「おはよう」と交わす一言や、仕事帰りにリビングで少しおしゃべりをする時間が、日々の精神的な支えになることも少なくありません。実際、「一人暮らしの寂しさを感じることなく、常に誰かと話せる環境は精神的な支えにもなり得る」という声もあり、シェアハウスでは入居者同士がちょっとした悩みを相談し合ったり、休日に一緒に料理や映画鑑賞を楽しんだりと、プライベートの時間も充実しやすい傾向があります。人と過ごす温かみが日常にあることで、孤独感が和らぎ前向きな気持ちになれるでしょう。

さらに、同じ屋根の下で暮らすことで生まれるコミュニティは、単なる友人関係以上の心強さがあります。住人同士で趣味や情報を共有したり、仕事のアドバイスを気軽に求め合えることも魅力です。特にコリビングでは、夢や目標を持った意欲的な人々が集まりやすく、一緒に生活し働く中で互いに良い刺激を与え合う環境が整っています。あるコリビング施設の紹介では「同じ空間で暮らし仕事をすることで良い影響を受け、自分のモチベーションも高まる」とされています。孤独を解消するだけでなく、自己成長やキャリアにもプラスに作用するのが共同生活の醍醐味と言えるでしょう。


シェアハウスが若者にもたらすメリット

シェアハウスやコリビングが20~30代の若者に支持される理由は、孤独感の軽減だけではありません。**経済的メリット**も大きな魅力です。東京のような家賃の高い都市でも、個室と共用部をシェアすることで賃料・初期費用を抑えられます。実際、東京都のシェアハウスに住む20代会社員を対象にした調査でも、入居の決め手として最も多く挙げられたのは「家賃や初期費用など経済的メリット」でした。しかし興味深いのは、次点に「人との出会いやコミュニティ形成の魅力」もランクインしていることです。費用面だけでなく、人と交流できること自体が若者にとって重要な価値になってきているのです。


シェアハウス生活の主なメリット(調査結果より)割合
家賃・初期費用のコスト削減34.9%
人との出会い・コミュニティ形成31.6%
立地の良さ25.0%
シェアメイトを通じた仕事上のメリット25.0%


上の表は、前述の東京都内シェアハウス入居者へのアンケートで、「シェアハウスに入居して実現できた・メリットと感じたこと」を尋ねた結果の一部です。経済的メリットがトップではあるものの、3割以上の人が「人との出会い・コミュニティ形成」を実感したメリットに挙げています。シェアハウスに住んでみて初めて、日々の交流やつながりが自分にとって大きなプラスになると気付く人も多いのかもしれません。

こうした背景から、シェアハウスは都市部で暮らす若者にとって魅力的な選択肢として定着しつつあります。「若者のライフスタイルや価値観が多様化する中で、都市部ではシェアハウスが新たな住まいの選択肢として注目されている」とする指摘もあります。一人暮らしでは得られない自己実現の機会や人脈づくりの場として、シェアハウスを評価する声が増えているのです。

もっとも、共同生活にはデメリットや課題もあります。プライバシーの確保や生活リズムの違い、ルールの遵守など、一人の気ままさが制限される部分もあるでしょう。実際、シェアハウス入居者に感じるデメリットを聞いた調査では「プライバシーの不安」が最多でした。他人と暮らす以上、完全に自分だけの自由空間ではないことは念頭に置く必要があります。それでも「現在のシェアハウス生活に少なからず満足している」と答えた人が7割以上にのぼり、「共同生活が自分の自己実現やキャリアにプラスの影響を与えている」と感じる人も75%に達しています。多少の不便さはあっても、それを上回る充実感や安心感を得ている若者が多いことが伺えます。


まとめ:孤独な時代に「人と暮らす」選択肢を

対面でのコミュニケーション時間が減り、孤独を感じる若者が増えている現代において、シェアハウスやコリビングといった共同生活型の住まいは有力な解決策となり得ます。日々「おはよう」や「おかえり」を交わす相手がいる暮らしは、それだけで心を軽くし、生き生きとした気持ちをもたらしてくれるものです。孤独感に押しつぶされそうなとき、そばに寄り添ってくれる人がいる安心感は何にも代え難い価値でしょう。

「ソロ社会」とも呼ばれるほど単身世帯の多い都市部ですが、人とのつながりを求める気持ちまで無くなったわけではありません。むしろデジタルな付き合いに慣れた若者だからこそ、リアルな絆への渇望が高まっているのかもしれません。そんな中、シェアハウスやコリビングは孤独を埋め、人生の質を高める新しいライフスタイルとして脚光を浴びています。もし日々の寂しさに悩んでいるなら、思い切って「人と暮らす」という選択を検討してみてはいかがでしょうか。そこにはきっと、独りきりでは得られない笑顔や励まし、そしてかけがえのない仲間との出会いが待っているはずです。


この記事を書いた人

SHARE PARADE(シェアパレード) の運営責任者です。「EDIT YOUR LIFE ― 今の暮らしをちょっと変えてみる」を合言葉に、**コミュニティのある暮らし(Community Living)**を中心としたシェアハウスを紹介しています。2011年の立ち上げ以来、東京全域で800件以上を現地取材。私自身も一人暮らし/シェアハウス/ルームシェア/ソーシャルマンションを一通り経験しており、一次情報と体験の両方を基準にサイトを運営しています。「住む場所が変われば、ライフスタイルも変わる」。コミュニティがある暮らしの楽しさと安心を、もっと当たり前の選択肢に――それがSHARE PARADEの役割であり、私のミッションです。 I am the administrator of the website 'SHARE PARADE.' Under the motto “EDIT YOUR LIFE—make a small change to your everyday,” we feature share houses centered on community living. Since our launch in 2011, I have visited and reviewed more than 800 properties across Tokyo. I’ve personally experienced living alone, in share houses, in room shares, and in social apartments, and I run the site based on both first-hand information and lived experience. I believe that when your home changes, your lifestyle changes too. My mission—and SHARE PARADE’s role—is to make the joy and peace of mind of community living a more everyday choice.

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