厳しい話が続きましたが、ここで少し、賃貸住宅におけるニーズの変化について述べたいと思います。現在の入居者が好む住まいは、昔と比べるとずいぶんと変わっています。まずあげられるのは、新築至上主義の終焉です。きれいなだけで平凡な新築ワンルームはとっくに飽きられています。
3点ユニット(バス・トイレ・洗面所が一体となったバスルーム)が倦厭されるのは言うまでもないでしょうが、バス、トイレ別だからといって、その物件が有利になるわけではありません。
フローリングもしかりです。古いアパートをフローリングに改装しても家賃UPすることは望めませんし、新築のフローリングは当然すぎて特記事項ですらありません。
他にも、一昔前であればウリになったようなエアコン、室内洗濯機置き場、ベランダ、クローゼットなども標準装備となり、集客には結びつかなくなっています。
新築アパートを建て始めた8年前、私は大量生産の住居に対するアンチテーゼとして、「4メートルの吹き抜けを持つ部屋」を企画しました。その他に、「ビルドインガレージの家」「分譲マンション並みのゴージャス設備の部屋」などの、コンセプト賃貸も展開してきました。
しかし、こういったデザイナーズ物件も、地方ではともかく、首都圏では珍しいものではなくなりました。
デザイナーズ物件は、一歩間違えれば、「オシャレだけど住みにくい部屋」になる恐れもあります。また、最初はよくてもすぐ飽きてしまう、という欠点もあるようです。クロスだけが奇抜であとは普通の「名ばかりのデザイナーズ物件」も、効果は薄れています。物珍しいことだけでは、賃料に結びつかない時代なのです。