住まいに対する価値観の変化

厳しい話が続きましたが、ここで少し、賃貸住宅におけるニーズの変化について述べたいと思います。現在の入居者が好む住まいは、昔と比べるとずいぶんと変わっています。まずあげられるのは、新築至上主義の終焉です。きれいなだけで平凡な新築ワンルームはとっくに飽きられています。

3点ユニット(バス・トイレ・洗面所が一体となったバスルーム)が倦厭されるのは言うまでもないでしょうが、バス、トイレ別だからといって、その物件が有利になるわけではありません。 フローリングもしかりです。古いアパートをフローリングに改装しても家賃UPすることは望めませんし、新築のフローリングは当然すぎて特記事項ですらありません。 他にも、一昔前であればウリになったようなエアコン、室内洗濯機置き場、ベランダ、クローゼットなども標準装備となり、集客には結びつかなくなっています。
新築アパートを建て始めた8年前、私は大量生産の住居に対するアンチテーゼとして、「4メートルの吹き抜けを持つ部屋」を企画しました。その他に、「ビルドインガレージの家」「分譲マンション並みのゴージャス設備の部屋」などの、コンセプト賃貸も展開してきました。
しかし、こういったデザイナーズ物件も、地方ではともかく、首都圏では珍しいものではなくなりました。 デザイナーズ物件は、一歩間違えれば、「オシャレだけど住みにくい部屋」になる恐れもあります。また、最初はよくてもすぐ飽きてしまう、という欠点もあるようです。クロスだけが奇抜であとは普通の「名ばかりのデザイナーズ物件」も、効果は薄れています。物珍しいことだけでは、賃料に結びつかない時代なのです。

この記事を書いた人

1959年、世田谷で工務店経営者の次男として生まれる。 世田谷にて珈琲専門店を経営していたが、株式投資の信用取引に手を出しバブル崩壊 と共に人生も崩壊。 夜逃げ、離婚、自己破産を経てタクシー運転手になり、その後土地の相続を受け 本格的にアパート経営に乗り出す。 世田谷、目黒などのブランド立地に駅から徒歩5分以内にこだわり新感覚アパートを 提唱し、土地2建物1の黄金比にて10年前後で回数し、ゆとりのある資産運営できる アパート経営実践会「10年後に笑大家の会」を主宰している。 自身も世田谷、目黒を中心とした60室の大家である。

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