「スルガ銀行」
最近日本中に最も名が知られたであろう地銀。それも悪い意味で。
かぼちゃの馬車を運営するスマートデイズ社の倒産から明るみになったスルガ銀行の不正融資問題。そんなニュースが報道されればされるほど、オーナーからの切羽詰まったお問い合わせが弊社に続々と寄せられてきます。
オーナーだけではありません。
「手持ちの内定はスルガ銀行だけ、この先どうすればいいのか。」
就活生仲間の友人は肩を落としそう嘆きます。
某就活掲示板には、内定者の不安や怒りが溢れかえる毎日。
そんな姿を見てシェアハウス事業に携わっている私だからこそ、伝えることができるものがあるのではないかと感じ、筆を執った次第です。
スルガ銀行の不正融資問題について、「背景」「動き」「対応」「疑念」の4つの視点でお話していこうと思います。
スルガ銀行は地方銀行の中でも知名度が高く、静岡県に留まらず全国で業績を伸ばしていました。また2016年には平均給与が地銀の中でトップに躍り出るなど、就職先としても人気の高い銀行でした。しかし実態は厳しいノルマ主義。そのプレッシャーから今回の不正融資に繋がったのではないかと囁かれています。
ではスルガ銀行はなぜ不正融資を行ったのか、またどのような手段で不正融資を行っていたのか。詳しくお話していこうと思います。
①不十分な審査機能
スルガ銀行には、融資先を探してくる営業部と、融資の審査を行う審査部がありました。この2部門は「ノルマ主義」というシステムによって関係性が最悪な状態でした。
「営業が審査より優位に立ち、営業部門の幹部が審査部に圧力をかけるような状況も生じておりました。この結果、審査機能が十分に発揮できていなかった面があると認識しておます。」
報告書の記載にもありますが、営業部が自分たちのノルマ達成のため審査部を脅し不正融資を横行していというのです。社内の審査機能が働いていない状況で、積極的にシェアハウスオーナーに融資されていたと驚愕の事実が明るみとなりました。
②二重契約
「当社は、シェアハウス関連融資の営業推進にあたり、投資用不動産融資の一つとして不動産業者を窓口とした営業(チャネル営業)を活用してきましたが、土地売買価格の水増し(二重契約)や自己資金確認資料の偽造や改ざんといった不正が行われていたことが判明いたしました。」
融資の拡大を図るために、不動産会社が提出した書類の改ざんや偽造に気付いていながら、目をつぶり融資を行っていたとのことです。
③ダミー会社設立
報告書が発表されてから数か月・・・。8月10日に報告書では明らかにならなかった驚愕の事実が浮かび上がってきました。
融資の拡大のため、ダミー会社を次々と作り、あたかもスマートデイズ社との取引ではない案件のように見せ、社内審査を潜り抜けていたという。
3年ほど前に同行にある告発文が届き、これを岡野副社長が知り、告発文に記載された業者関連の融資をやめるよう指示をしたそうです。しかしある支店長が審査を潜り抜けるために、ダミー会社を作り、別会社の案件とみせかけたことで、不正融資が再開してしまいます。
これを機に、審査部に気付かれては更なるダミー会社を作り続けるという横暴な手段を使い、シェアハウスへの融資を拡大していったとのことです。
事件の発端はベッキーがCMに起用されたことで話題にもなったかぼちゃの馬車を運営するスマートデイズ社の倒産です。
ちなみにベッキーが起用された際オーナーからクレームがあったそうです。「イメージが悪くなるからやめてくれ」と。事件の伏線だったのでしょうか(笑)
さて倒産を機にスルガ銀行の不正融資が明らかになっていくわけですが、どのような動きがあったのか振り返ってみましょう。
【2017年】
10月 スマートデイズ社、オーナーへサブリース賃料減額通知
【2018年】
1月 スマートデイズ社、オーナーへ家賃の支払いが滞る
4月9日 スマートデイズ社、東京地裁へ民事再生法の適用を申請
4月18日 スマートデイズ社、民事再生の申し立て棄却
4月25日 ムーディーズ・ジャパン、スルガ銀行の格付けを格下げする方向で見直すと発表
5月8日 スルガ銀行、 2018年3月期の連結純利益が17年3月期に比べて50%減の210億円にとどまると発表
5月15日 スマートデイズ社、破産手続き開始
5月15日 スルガ銀行『「シェアハウス関連融資問題」に関する経過のご報告と今後の対応について』発表
5月22日 被害弁護団、融資担当者と不動産業者の従業員らについて、有印私文書変造などの疑いで告発状を警視庁に提出
6月6日 スルガ銀行「2018年3月期決算短信」の一部訂正
スルガ銀行は様々な報道をされる中、5月15日【「シェアハウス関連融資問題」に関する経過のご報告と今後の対応について」】の報告書を発表しました。
まとめると大きく分けて2つの対応策を提示しています。
「お客さま対応チーム」を設置し、現在9割のオーナーとコンタクトが取れているという。
一人一人に合った最善の返済プランを話し合い決めていく動きだ。
同行とは関係のない外部の専門家で結成された第三者委員会を設置するという。
調査終了後、結果を公表するとのことだが、真実は伝えられるのであろうか。
第三者委員会というものは、中立な立場である専門家が問題の真相を究明するための結成されるものだが、経営層と仲の良い専門家を寄せ集めて作るといった、全く意味のないことをする場合も多々あるのが正直なところ。
とはいえ、事件の真相は第三者員会の調査報告の公表をまつしかありません。二重契約などといった書類偽造に関してどれくらいの社員が関与しているのか、また支店が独断で行っていたのか、組織ぐるみで行っていたのか、事実の究明を急いでほしいものです。
前述のようにスルガ銀行はオーナーに対して、また世の中に対して、早急な対応を行いました。一刻も早い騒動の沈着化を狙っているのでしょうか。
しかし金利の引き下げや、返済期限の延期など、一見オーナーに寄り添った手厚いサポートをしているかのように思いますが、元金そのものの減額は検討しないと発表している。結局オーナーは家賃保証もない、家賃収入の目途もない、どうしようもない大きな負債を背負っているのが現実です。
そもそも本当にスルガ銀行は、スマートデイズのビジネスモデルに限界があることに気付けなかったのでしょうか。
就活掲示板にはこんな一言が。
「訴えられてる件でむしろ被害者面しだしてるのはさすがに笑う」
当初スルガ銀行は騙された側だと主張し、被害者であるという立場を貫いていました。しかし行員による内部告発や、内部調査などにより不正が決定的に。認めざるを得ない状況となってしまいました。
不正を認めるものの、まだまだ疑念は残ります。
「シェアハウス関連融資については、それまでの資産形成ローンの一つと して捉えるのみであり、経営として全体的な規模感やビジネスリスクを把握しておらず、 ガバナンス機能が不十分であったものと認識しております」
報告書の一部になりますが、つまりこれは「最初はシェアハウス業界のリスクを知らなかった、融資しても問題はないと思っていたが、スマートデイズ社が急に倒産してしまいどうしようもない。そのようなことを想定できなかった、反省しております。」という解釈になるだろう。
シェアハウスという新しい分野への融資に、いつも以上に慎重にならないものだろうか。シェアハウス業界ではありえない利回りや条件に、疑いの目はなかったのだろうか。
もしスマートデイズ社と手を組み、融資を斡旋していたとすれば、組織ぐるみの詐欺になりかねません。まだまだスルガ銀行への疑念は残ります。
最終報告書がまだ発表されていませんが、どのような報告になるのでしょうか。