先日、相談を受けた北関東の大家さんは、準大手のアパート専門メーカーの提案で、1500万円の土地に6500万円の軽量鉄骨のアパートを建てました。22平米のワンルームが11世帯というありふれた間取りで、とてもお競争力があるとは思えません。
契約書を持参されていたので見せてもらうと、「一括借上げで家賃保証は10年間」とされていました。
しかし、契約書をよく見てみると、2年ごとに家賃の見直しが行われ、さらに先方からの契約解除は3か月前の通告で可能とされていました。
当初、高い家賃を設定して、あたかもそれを10年間キープするように言っていますが、契約上では2年ごとに家賃が見直されるのです。つまり、2年毎に家賃が下がる可能性があるということです。その下落率は一般的な相場よりも大きいと言われています。
それに、10年間の家賃を保証してくれるはずの会社が、自分たちが「3か月分の家賃」を支払うだけで、その契約を即刻解除できると言っているのも、おかしな話です。
他に、契約書には、入居者の入れ替え時の原状回復費用や、建物のメンテナンス工事、リフォーム工事も大家負担で行うことも示されていました。
工事の請負先はもちろんメーカーですから、しっかりと相手の売り上げになります。メーカーによっては、「提案するリフォームを行わないなら保証賃料を下げます」とまでいってくると言います。
「そんなのズルい!」
「無責任だ!」
とメーカーを責めるのはお門違いです。
相場より高い建築費、一括借上げとは名ばかりのメーカーに有利な内容の契約書を了承して、捺印をしたのはあくまでも大家さん自身です。
この方の場合、近い将来、そのアパート経営が破たんすることは目に見えていました。しかし、私が契約書の内容を説明するまで、大家さんは失敗したという感覚はない様子でした。
私の方が、「ええっ!大丈夫ですか?」と驚いたくらいです。
典型的な無知からきた失敗だと思います。この方は、おじいちゃんではありません。しっかりした50代の社会人です。この年代ですらターゲットになってしまうのですから、メーカーの営業力には恐れ入ります。