私もこの事業に携わるまでシェアハウスとルームシェアについての違いさえ知識がなくバックパッカーの外国人や仕送りの少ない学生、低所得層の方が住んでいると思い込んでいました。いわゆるバブル世代の感覚では、他人と何かをシェアするという考えは毛頭ありません。学生時代には都心のワンルームマンションに住み、アルバイトをして自分の車を購入する。中古品などには目もくれず全て新品で使用するのは至極当たり前の感覚でした。
そう、いわゆる「所有する」にこだわる世代といえるのではないでしょうか。ですから現在でもアラフォー・アラフィフとメディアで祭り上げられて恰好のマーケットになり続けている世代だと感じています。また、一昔前で40代50代といったら立派な中年であり流行りのマーケット市場からは外される世代でした。
さて、私個人の感覚はさておき話を戻しましょう。2013年現在、シェアハウスを利用する世代は20代後半~30代が圧倒的に多く、この3年間で最も拡大しているのは30代となっています。(シェア住居統計データ2013年調べ)
いままで200人以上にわたりシェアハウスの案内(内覧)や、定期巡回の際にお会いするハウスに住んでいる人達とのさまざまな会話の中で、「所有しない」という価値観を持っているひとが多いことがわかりました。
いわゆる1970年~1982年生まれの「氷河期世代」または、「ロスジェネ世代」と呼ばれる世代は、就職氷河期に就職活動を行い、安定した職につけずに派遣労働やフリーターを経験していることが多いことも特徴です。彼らが就職活動をし、新入社員のころは、これからは個人の実力の時代だとか、成果報酬だとか、キャリアを磨くなど、そんなことが盛んに言われていて、デフレが常態化した経済下で青春期を送った彼らは、物を所有することよりも、自分自身に投資するという傾向が強く、金銭感覚がとても堅実だという印象を受けます。
具体的な例で自分自身に投資とは、キャリアアップのために資格取得をしたり、語学留学をする、異業種との交流を図る場所に参加する、見聞を広げるために海外旅行に多くでかけるなどがあげられます。
従って、住まいに対する新たな価値観が生まれ、自分のライフスタイルにいつ変化が起こっても身軽に対応ができるように個人でマンションなどを賃借する縛りや、初期費用を控えたいという発想が、シェアハウスを利用することにつながっているようです。
「所有しなくとも、理想に近い快適が得られればそれで良い。」
一昔前では考えられなかった、使いたい時に使った時間分だけ支払いをするカーシェアリングや、ブランドバックを期間でレンタルする、不要なものを個人で売買するオークションやフリーマーケットなどが流行っているのもうなずける世の中になっています。
住む家に於いても、住みたい時に住みたい期間だけ利用するというシェアハウスの需要が高まることも十分に理解できるのではないでしょうか。
所有することで縛られる生き方に違和感を持つ彼らにとって、快適な生活もレンタルする時代になってきているのです。
次回は、晩婚と未婚化「成熟したシングルたち」の新しいライフスタイルについてお話ししたいと思います。