NOVEL

シェアハウス小説

『Re青春デイズ』 7話~宮崎祥子の目線~

悪夢というものはまとめてやってくるものなのか。


悪夢その①
キッチンの水道口を壊し、共有スペースを水浸しに。下の階は水漏れの惨事。シェアメイト及びシェアハウス運営会社の方々に夜を徹して迷惑をかけた

悪夢その②
一切記憶がない

悪夢その③
シェアメイトが私を部屋まで運び、濡れた服と下着を着替えさせてくれ、部屋も体も知らぬ間に開陳(女子にだけだけど)


……これはもう、恥というよりも罪だ。しかも、私が知ったのは翌日の夜。何も知らずに次の日二日酔いの体を起こして会社に行って、夜帰宅してから知らされた。共有スペースに行くと梨華ちゃんがいて、「祥子、昨日のこと覚えてる?」と聞かれて、丸一日後に事の顛末を知ったというわけだ。

「ほら、あそこ、水漏れのあとができてるでしょ?友祐が夜中に運営会社の人に電話したら駆けつけてくれて、それから業者の人を呼んで、みんなで床の水を処理し終わったのが朝の5時だよ。水漏れしたところ、これから修理するみたい」

まったく記憶がないので、聞かされたときは現実味を持てず、自分が悪いという感覚さえ湧いて来なかった。「宏枝と私で祥子を部屋に運んで、着替えさせたんだよ。祥子、全然起きなかったけど…濡れてるのに。よっぽどお酒がきいてつぶれちゃったんだね」と言われたときに、おねしょしてしまったみたいな恥ずかしさが込み上げてきて、やっと、しでかしたことのとんでもなさが自分事として肚にきた。その瞬間、私が今ここにいること自体が間違っているように思えて、しばらく身動きできずにフリーズしてしまった。そののち「引っ越さないと…」というセリフが口をついて出たのだった。

それを聞いた梨華ちゃんは慌てて「あっ、でも保険は下りるみたいだし、一応大丈夫だよ。悪気はないのはみんな分かってるし…」と呆然としている私をなだめるように何度もフォローしてくれた。そうしているうちにだんだん正気を取り戻し、みんなに謝罪しに回ろうと覚悟を決めたのだった。

そんな大事件を起こした私の悪夢にはまだ続きがあった。


悪夢(≒幸運)その④
一瞬にして自分の名前がシェアハウス内に知れ渡った。そして、そのことで私は逆に、住人たちにシェアメイトとして迎え入れられることとなった。

svgこの記事を書いた人
奥 麻里奈

1982年8月3日生まれ、獅子座、O型。大阪府出身。都内のオフィス複合型シェアハウスに住む、フリーランスの三十路ライター。美容専門誌編集者としてまだ出版社に勤めていた2012年1月からシェアハウス生活をスタート、1年後に独立。現在は、ファッション・ビューティからキャリアビジネスまで分野を問わず活動中。シェアハウス内のラウンジがおもな仕事場。趣味は服と読書。