COLUMN

オーナー向けコラム

かぼちゃの馬車という物件を保有していますが、貴社でサブリースできませんか?

ここ最近(2017年11月)、かぼちゃの馬車の物件オーナーから上記のお問い合わせが急増しています。

かぼちゃの馬車のオーナー様と管理会社であるスマードデイズ(旧スマートライフ)の間に何かが起きているようです。



スマートデイズ社より支払いがしばらく銀行返済分になるとの連絡がありました

上記は、あるオーナー様から頂いたメールの一文です。シェアハウス業界に身を置いている人間からすると、遂に来たか!というのが真っ先に頭に浮かびました。私自身、2016年3月に執筆した記事『都内新築シェアハウス投資利回り8%!サブリース!リスクなし!寄宿舎合法!』にて、サブリース賃料改定の可能性に触れておりますが、実際いつのタイミングで来るかはわかりませんでした。なお、上記の記事では、5年後と記載・予想していますが、スマートデイズ社の設立が平成24年であり、ちょうど5年後の平成29年とジャストタイミングでした。

普通であれば、他の管理会社に変更してしまえば問題ないのですが、今回のケースはそれが上手くいきません。



スマートデイズのビジネスモデルとは?

管理会社の変更が出来づらい理由を理解するには、まずスマートデイズのビジネスモデルを理解する必要があります。

the 自転車操業

一言で表すと、上記になります。
極端な例になりますが、

入居者様には1部屋 40,000円で賃貸する
オーナー様には1部屋 60,000円でサブリース賃料を支払う

単純に1部屋毎月20,0000円の赤字になるモデルになっています。
※わかりやすくするために、単純化した数字になっています。実際とは異なりますので、その点ご了承ください。

これでは、運営すればするほど、赤字の金額が膨れ上がっていきます。
仮に6,000室(485物件 × 12室/1物件)あると仮定すると、
※2017年11月現在、かぼちゃの馬車のHPに掲載されている物件数は485件となっておりました。
※真偽はわかりませんが、800件8000室という噂もあります。

20,000円 × 6,000室 = 120,000,000/月

月1.2億円の赤字となります。ちょっと信じられない数字です。なお、上記は、稼働率100%の前提なので、、、稼働率50%・60%のケースを考えると、とんでもない数字になります。
※真偽はわかりませんが、稼働率30%を切っているという話もあります。

では、どこで利益を稼いでいるかというと、

土地+建物で7,000万円の価値しかないものを1~1.2億円にてオーナー様に物件販売し、売却した時点にて3,000~5,000万円の利益を確定させています。
例えば、月10棟、新規に建てれば3~5億の売却益が、そこから毎月の管理マイナスキャッシュフローに補填。これが月1~3棟の新規建築となると、売却益より管理マイナスキャッシュフローの方が大きくなります。
※上記の数字も単純化したものとなります。実際とは異なりますので、その点ご了承ください。

なので、新しい物件を建て続けないとキャッシュフローが回らなくなります。そして、物件が多くなればなるほど、マイナスキャッシュフローも大きく膨らむという、まさに自転車操業。
※仕事紹介でキャッシュバックというビジネスモデルの紹介もされていますが、そもそも入居者がいなければ、成り立たないモデルになっています。



見せかけの利回りを大きくするために、サブリース賃料が異常値に

利回り8%と高い数字にさせる・物件の売却価格を吊り上げるために、異常値なサブリース賃料をオーナー様に提示していたため、それと同じ条件でサブリース契約を引き継いでくれる管理会社はなかなかいないでしょう。

シェアハウス業界のサブリースフィーの相場は、30~40%となっていることが多く、入居者様との賃貸契約金額が40,000円のお部屋であれば、24,000~28,000円がオーナー様が受け取るサブリース賃料の相場になります。

もともとスマートデイズ社から受け取っていた60,000円のサブリース賃料が24,000~28,000円へのダウンとなっては、オーナー様もご納得いただけず、管理会社の変更には至らない結果になってしまいます。

物件売却を検討しても、もともと7,000万円の不動産価値しかないものを1~1.2億で購入しているので、大幅な赤字を覚悟しないと売却も難しいでしょう。知り合いの不動産業者に確認したら、既に売り物件が多く出ているとか。これでは、売却価格がより下がる可能性が高ります。

現状、以下のような物件が不動産売買マーケットに出てきているようです。

●約1.8億円で表面利回り8%

利回りを見ると、ほぼ購入した金額で売却に出されているようです。赤字を覚悟での売却は難しいようです。



●約1.1億円で表面利回り7.6%

こちらのシェアハウスでも先ほどと同じ条件で売却に出ているようです。シェアハウスの場合、通常のワンルームアパートよりも高めの利回りで売却されるケースが多いので、もしサブリース(家賃収入)が今後も変わらないとしても、やや魅力に欠けるかもしれません。



●約1.5億円で表面利回り7.6%

こちらもほぼ同じ条件のようです。



なぜ、このタイミングでキャッシュフローが悪化したのか?

かぼちゃの馬車の物件オーナー様の多くが、サラリーマン大家さんです。サラリーマン大家さんが物件を購入する際、当然、銀行から融資を受けています。その融資はある銀行がほぼ一手で実施していたのですが、しばらく前にその銀行がシェアハウスに対する融資を一切ストップしたことが今回の発端です。

かぼちゃの馬車の物件だけで、500~1,000億円(推定)近い融資が既にされています。また、スマートデイズ社以外でも、スマートデイズ社と同じビジネスモデルを展開している会社が数社あり、その融資も同じ銀行がしていると思われます。融資総額は、もしかしたら2,000億円を超えているかもしれません。自転車操業モデルに、これ以上融資額が大きくなると、リスクを負えないと銀行側も判断したのでしょう。
※2019年11月追記 融資残高は1992億円となっております。これにはかぼちゃの馬車の物件以外も含まれます。

以前は、某不動産投資サイトにて、【新築木造1棟 家賃保証利回り9%以上実現の仕組みとは】という名目でよくセミナー告知をしておりましたが、現時点では、セミナー告知はされていません。
※最近、【合法民泊で安定収入を実現する方法】など、シェアハウスとは違うセミナーを開催しています。


融資がストップとなると、スマートデイズ社は新しいシェアハウスを建てることが出来ず、管理マイナスキャッシュフローだけが残る状況になります。

現時点では、<銀行返済分>はまだオーナー様に支払いが出来ているようですが、今後さらなる減額になる可能性があります。


最悪の結果にならないよう、スマートデイズ社には新規事業を伸ばしていただき、持ち堪えて頂きたいですね。



追記)2017年12月6日
2017年8月2日にオーシャナイズという会社と資本提携を発表しております。資本提携というよりかは、事実上の買収に近い形式だと思われます。オーシャナイズの経営陣からのサブリース賃料値下げの要求があったのかもしれません。



2018年1月 ついにオーナー様への支払いが困難な状況に

2018年1月17日、20日に物件オーナー様向けに説明会が開催され、2018年1月以降の支払いが困難な状況であることが明らかになりました。

参考URL)
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6269343


2018年2月 融資資料の改ざん多発 預金額水増しが行われていたようです。

参考URL)
https://www.asahi.com/articles/ASL283DFVL28ULFA00F.html


2018年3月 詐欺事件として訴訟問題になりました。今後、本格的な調査が始まるでしょう。

参考URL)
http://president.jp/articles/-/24805


2018年4月 スマートデイズ、東京地裁から民事再生法の適用申請を棄却され、破産手続きに移りました。

参考URL)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201804/CK2018041902000150.html



2019年11月 スルガ銀行 かぼちゃの馬車物件のオーナーに徳政令か?

一部の報道による、オーナーがかぼちゃの馬車の物件を手放した場合、借金を帳消しにすることをスルガ銀行が検討しているようです。7,000万円の価値しかないものを12,000万円で購入しているのであれば、物件を手ばなしても5,000万円の残債が残りますが、それがチャラになるようであればオーナー様にとっては願ってもない機会かと思います。

ただ、一方で融資の方法に不適切な個所があったとはいえ、すべての責任をスルガ銀行が負担するのは異論もあるかもしれません。
本来、一番責任を取るべきは、かぼちゃの馬車の販売業者であったり、開発元であるスマートデイズ(スマートライフ)であるかと思いますが、既に倒産・解散している手前、ここに責任を負わせることが出来なくなってしまっています。

また、かぼちゃの馬車のケースとは全く別に、社会には詐欺や似非投資の話は多数あります。投資や事業は自己責任が原則であり、その失敗による負債が帳消しになることは非常に珍しいかと思います。失敗による負債を他の誰かが負担するのであれば、無責任な投機が過熱していき、いきつくところは誰も責任が取れない状況でしょう。

ただ、正論では、本件は解決しないので、負担を負えるところが負いましょうということなのかもしれません。

スルガ銀行が上記の案を進めるのであれば、来年あたりにはかぼちゃの馬車の物件の多くが市場に出まわってくるかもしれません。
バーゲンセールの始まりか。

参考URL)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000169735.html



2020年3月 スルガ銀行 物件を手放せば借金を帳消しに!

昨年の11月より噂されていた徳政令ですが、2020年3月25日正式に以下の内容の発表がされました。

スルガ銀行HP「シェアハウス関連融資債権の譲渡に関するお知らせ

まずは東京地裁に民事調停を申し立てていた257人を対象に、土地と建物の物納を条件に借金を帳消しにするようです。

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