SHARELIFE MAGAZINE

シェアライフマガジン

暗闇が人の心を豊かにする 日本人と闇の深く幸せな関係

現代の東京に、真の暗闇を感じられる瞬間などありません。
もちろん地方の山奥に行けば、本当の闇を味わうことができます。ですが、手を伸ばせばすぐに電気のスイッチを入れることができ、窓を開ければ深夜であっても街灯の光が飛び込んでくる。そんな環境に私たちは慣れきってしまっています。
シェアハウスでは光熱費が家賃に含まれるところも多いでしょう。そのため、よりルーズになりがちな人もいるようです。「いくら使ってもタダ」という気持ちから、電気をつけっぱなしにし、深夜まで煌々とした光を浴びて生活している人も、決して少数派ではないでしょう。

しかし、暗闇は決して不安やわびしさの象徴ではありません。 暗闇の中でしか見えないものもあります。暗闇の豊かさは、人を幸福にする。そのような考え方も存在します。


「暗闇合コン」「暗闇ごはん」「ナイトハイク」など、暗闇関連イベントが注目されている

昨年から、暗闇に関連するイベントが盛り上がりを見せています。
たとえば、「暗闇合コン」。こちらは、真っ暗な中で異性と交流をする婚活パーティです。声だけを頼りに相手とコミュニケーションをとることで、人間の本質を見抜こうという意図があるようです。

また、「暗闇ごはん」というイベントも開催されています。こちらは海外で古くから存在する『ブラインドレストラン』に発想を得たもの。日本ではなんと「お寺」で開催されることが多いよう。様々な寺社でこのような企画が行われています。その中身は、薄暗がりの部屋の中でアイマスクを着用しながら仏料理をいただき、よりその味を楽しむという企画だそうです。目で楽しめない分だけ、味そのものや香り、食感などを深く味わうことができるということで評判となり、多くの人が来訪しているとされています。

また、登山ブームからこちらも注目されているのが「ナイトハイク」。真っ暗な山の中をウォーキングするという、非常にシンプルな内容となっています。 「夜の山を歩くのは怖そう」というイメージをお持ちの方も多いようですが、暗闇に包まれた山は昼間とは違った魅力に満ち溢れているそうです。暗闇を歩み続けることで感覚が鋭敏になり、思考が研ぎ澄まされるという意見もあります。

暗闇イベントに共通していること。それは、人の目線を気にせず、少しだけ大胆に振る舞える「解放感」があるということ。もうひとつ、不思議にも暗闇には「安心感」があるということです。

人間は古来から、闇を恐れつつも敬愛してきました。
日本でも「夜桜」見物や、怪談噺を楽しむ「百物語」、闇にまたたく光を楽しむ「蛍狩り」などが今でも根強く残っています。また、長野県の善光寺本堂では、暗闇の空間を歩く「戒壇巡り」を体験することができますが、こちらも有名な“アトラクション”と言えるでしょう。 つまり、日本人のカルチャーと暗闇は根強く結びついているのです。

しかしながら今の日本人は、明るさと豊かさを混同しています。光に満ち満ちた明るい社会を作ることが、豊かな世界だと考えられています。 しかしながら、闇もまた、豊かさの象徴であると言えるのです。

シェアハウスでも、たまには電気をすべて消してみましょう。 そうすることで、普段見えているものが見えなくなり、見えないものが見えてきます。 聴覚や嗅覚が冴え、感覚が過敏になる。このような経験をシェアすることで、シェアハウスの住人たちの絆も深まり、気付けなかったことに気付きあえる、感謝できる心の豊かさを手に入れることができるようになるのかもしれません。

この記事を書いた人

東京一人暮らしアドバイザー。 学生時代は下北沢や吉祥寺で過ごし、現在は高円寺在住。 趣味は一人暮らしでもカンタンに作れる、料理・お菓子・パン作り、カフェ巡り、便利でカワイイ雑貨集め。 経験に基づいた一人暮らしの物件探し、防犯情報、お得な節約法・料理術などを提案していきます。最近、シェアハウスへの取材も多く実施しています。 Tokyo Solo Living Advisor. Lately, I have been conducting many interviews about share houses and Japanese language schools.

最近書いたコラム